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Th11 01, 2024
2024年4月、改正された働き方改革関連法の施行で、運送業界が大きなダメージを受けるとされる「2024年問題」。トラックドライバー不足の慢性化と低賃金が課題とされている運送業界だが、ドライバーの時間外労働を年960時間に制限する改正法は、さらに厳しい課題を突きつけることになる。今回はこのテーマに関する過去記事をピックアップする。
「2024年問題」とは、2024年4月の働き方改革関連法施行により、トラック運送業界に発生する諸問題のことを指す。具体的には「運送会社の利益減少」「ドライバーの収入減少」「荷主が支払う賃料の高騰」などが想定されるという。
新たな働き方改革関連法ではドライバーを対象とした時間外労働の上限が年960時間となる。トラックドライバーの多くは現在より労働時間が短縮されるが、これにより業界全体でドライバー不足が深刻化し、また時間外労働によって得ていた収入が下がることで、ドライバーにも大きなダメージとなる可能性がある。
2024年問題の回避に向け、運送業界では人手の確保はもちろん、他社との協業や新技術の開発などの取り組みが急がれている。この記事では運送業界の現状と各種取り組みについて、過去記事から紹介していく。
2020年代に入り、運送業界のリスクがクローズアップされている。米中の対立や新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーン(供給網)の混乱に加え、今後ますます深刻化すると考えられているのが人手不足だ。24年の働き方改革関連法改正によりドライバーの労働時間が制限されると、1台のトラックを長時間動かすことで成立してきた従来の輸送ルートを維持できなくなったり、ドライバーの人数が不足したりするとの見方が強まっている。
国土交通省の総合物流施策大綱の検討メンバーを務める堀尾仁氏によると、2024年問題に対処するには経営層が「危機意識」を持たなければならないという。そのためには業種・業界の壁やサプライチェーンの垣根を越えて「現場が抱えるリアルな問題意識を繰り返し発信して認知してもらう」ことが必要になっている。
2024年問題に向けた対策として、新たな取り組みも始まっている。例えば運送大手のヤマトホールディングスはJAL(日本航空)と提携して、2024年4月より貨物専用機の運航を開始する。小型の貨物機3機を使って東京と北海道・九州・沖縄の各エリアを結び、1機当たり10トントラック5~6台分相当の荷物を運送する計画だ。
物流会社同士のM&A(合併・買収)で危機を乗り切ろうとする動きもある。佐川急便出身の鎌田正彦社長が設立したSBSホールディングスは、中小の配送事業者を積極的に傘下に収めることで自社の配送網を広げるとともに、ドライバーの確保や新たな取引先・荷主の開拓に取り組んでいる。
運送業界の課題解決に向け、新技術を開発しているのはNECフィールディング(東京・港)だ。同社は「ベクトルアニーリング」という疑似量子技術(量子コンピューターの高速計算を既存のスーパーコンピューターで再現する技術)を利用して、配送品や配送先などの組み合わせ計算の高速化に取り組んでいる。その検証により、配送ルート策定作業の短縮化や緊急配送の効率化が期待できることが分かってきた。後者では配送コストを30%ほど削減できる可能性を見いだせたという。
2022年6月にJR貨物の社長に就任した犬飼新氏も、2024年問題に関心を寄せる1人だ。「貨物列車は運転士1人で、最大トラック65台分の貨物を輸送できる」と語る犬飼社長は、同社の事業を通じて長距離トラックドライバーの働き方や生活の改善、ドライバー不足の解消に貢献していきたいという。
運送業界にとって大きな打撃となる2024年問題。課題に対処するにはトラックドライバーの不足解消が欠かせないが、これまで低賃金・長時間労働が常態化していた業界にとって、新しい人材の募集は容易ではない。企業同士のタッグや新技術の開発によって課題に取り組む動きもあるが、2024年はすぐそこだ。日本経済を支える物流業界の今後を注意深く見守っていきたい。
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